2018年11月24日土曜日

Kick and Jump - キャプテン翼とジャンプ

Animae Parallelae IV
アニマエ・パラッレラエ~並行霊魂  其の四

 2016年リオ五輪閉会式・東京五輪告知映像に登場したキャラクターを比較します。





リオ五輪閉会式・東京五輪告知映像




後発誌の戦略



「週刊少年ジャンプ」は、「マガジン」「サンデー」がともに発刊された1959年から9年後の1968年に創刊され、ことしで誕生から50週年をむかえました。後発となったジャンプは、すでに人気作家を抱えた両誌にネームバリューで対抗することが望めませんでした。マガジンは国民的人気漫画となった「巨人の星」や「あしたのジョー」、さらに「ゲゲゲの鬼太郎」や「天才バカボン」のような今に至るまでリメイクされている有力作品を擁していました。このことから
賞をつくって作品を公募することで新人発掘をすること、さらには読者アンケートで作家を競わせることがジャンプ独自のスタイルとなりました。新人たちは安定した技術よりも、破天荒なものをつくりだす荒削りな可能性をもちこんで、誌上で才能を開花させていきました。のちに「デビルマン」や「マジンガーZ」をつくりだす永野豪のお色気漫画「ハレンチ学園」や、本宮ひろ志の「男一匹ガキ大将」が、スキャンダルをまきおこしながらジャンプの人気を高めていきました。ジャンプは創刊から5年でマガジンを超えて、雑誌発行部数で首位に立ちました。





格闘漫画の路線




作画の上手な作家がサンデーやマガジンに集まる中、ジャンプは読者の人気があれば絵のうまさは問わないという方法で漫画を掲載していきました。若い勢いを活用するこうしたやり方を見ると、たとえばいま日本の漫画に惹かれているヨーロッパの人たちなども、専門学校を出たりして絵のうまいひとはすごく達者なのですが、そんなふうに漫画そのものの個性と面白さで作風をつくっていく環境が欠けているように見えます。日本のように漫画雑誌がたくさんあって毎週毎月読まれている状況がありません。ジャンプでは80年代に「Dr.スランプ」の鳥山明が登場してから、ポップなイメージからか女性の読者が増え、従来はもっぱら男性むけの内容だった掲載作品のスタイルにも幅がくわわってきました。ところが、そのころライバル誌のサンデーで高橋留美子の「うる星やつら」やあだち充の「タッチ」のラブコメ路線が大人気を博することになったので、ジャンプはこれに対抗してどのような方向性をとるか、内部で話し合われることになりました。同じ方向性をとって流れに乗るべきだという意見が多い中で、結論は編集長の独断によって出され、ジャンプはそれとは反対の男性的な格闘漫画を掲載していくことになりました。





アニメ化から世界へ



この路線で試行錯誤が繰り返されるなか最初にヒット作として登場してきたのが、武論尊・原哲夫の「北斗の拳」でした。続いてゆでたまごの「キン肉マン」、車田正美の「聖闘士星矢」、そして高橋陽一の「キャプテン翼」がつぎつぎと成功をおさめました。戦前から野球が国民的スポーツである日本では、しぜんと野球漫画に人気がありました。ところがこの作品はJリーグなどのなかった時代、世間にサッカーブームを作り出してしまったすごい漫画でした。この作品は、おなじ年からサンデーで連載が開始された野球漫画「タッチ」とともに、従来の「泥臭い」スポーツ漫画とは異なる「爽やかな」スポーツ漫画の走りだったのではないかと思います。欧州や南米をふくむ世界の多くの国では、日本やアメリカとはちがい、サッカーが国民的スポーツです。このことから、海外では日本のスポーツアニメのなかで、「キャプテン翼」がダントツに人気があります。南米もまたこの例にもれないことから、東京五輪の紹介映像のなかでも登場アニメのひとつに選ばれ、映像が登場したときには歓声が上がったといいます。事実世界のサッカー選手のなかにも、元スペイン代表で現在京都サガン鳥栖でプレイするフェルディナンド・トーレス選手をはじめとして、子供のころに影響を受けたり、刺激をうけてサッカーをするようになったファンが少なからずいるそうです。





競争と加工と



競争によって切磋琢磨し名声をきそうという文化は、古代ギリシアで生まれて、オリンピック競技大会の形で現在にまで伝えられています。古代の『オリンピアの祭典』の期間中には、ふだん都市国家間の戦争が絶えなかったギリシア全土が休戦状態に置かれました。平和の祭典という捉え方もこのことに根拠が求められます。このほかにもアテナイでは毎年酒神ディオニュソスに捧げる『ディオニュシア祭』において、ギリシアで盛んだった悲劇のコンテストがひらかれていました。文芸・演劇でも競技が行われ賞が与えられていたわけです。



日本には昔から「鳥獣戯画」や「北斎漫画」のような滑稽味のある単純な様式の絵の楽しみ方がありましたし、順番に内容をたどっていく絵巻物をアニメーションや漫画の前身としてとらえる見方もあります。しかし直接的には19世紀に西洋から入ってきた風刺漫画にはじまった日本の漫画は、明らかに独自の発達をとげて、「マンガ」とよばれたり、元々はアニメーションの略である「アニメ」も海外でかなり一般的な言葉になっています。まさに輸入と加工から独自なものを作り出す日本の文化らしい成り行きだと思います。





海外のファンによるジャンプ原作のアニメの主題歌カバー集
(キャプテン翼・聖闘士星矢・ドラゴンボール・スラムダンク)






フランス代表エムパペ選手が負傷した自分をキャプテン翼になぞらえたインスタグラムの投稿




参考



「君はキリアン・ツバサだ!」フランス代表の新星、エムバペが大空翼との意外な共通点を報告! 世界中から大反響https://www.soccerdigestweb.com/news/detail/id=50610
「キャプテン翼」からサッカーの素晴らしさを教えてもらった世界中のプロ選手たち
https://gigazine.net/news/20131215-football-player-influenced-captain-tsubasa/

創刊50周年「ジャンプ」伝説の元編集長が語る「鳥山明をめぐる社内政治」ASAHIdot.https://dot.asahi.com/dot/2018021300102.html?page=1
『Dr.スランプ』で「マシリト」と呼ばれた男・鳥嶋和彦の仕事哲学 #SHIFT
http://www.itmedia.co.jp/business/articles/1810/30/news005.html
外国人漫画家が語る自国の“日本漫画&アニメ”事情 産業としての成熟はこれから 山陽新聞digital
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/242397

BS1スペシャル 「ボクらと少年ジャンプの50年」 2018.07.08

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